1993年、日本サッカーの歴史を大きく変える出来事がありました。それが「Jリーグ」の開幕です。華やかな演出と国内外のスター選手の登場によって、空前のサッカーブームが巻き起こり、日本中が熱狂しました。本記事では、その記念すべき1993年のJリーグ開幕シーズンを振り返ります。
1.Jリーグ開幕の背景
日本サッカーは長らく「日本サッカーリーグ(JSL)」が中心でしたが、人気・実力ともにプロ化の波には乗り切れていませんでした。
そんな中、日本サッカー協会と企業が連携して「プロサッカーリーグ構想」が進み、1993年5月15日に「Jリーグ」がついに開幕。初年度は10クラブが参加し、地域に根ざしたクラブ経営と、エンターテインメント性の高い演出で大きな注目を集めました。
2.記念すべき開幕戦
1993年5月15日、国立霞ヶ丘競技場で行われた開幕戦は「ヴェルディ川崎 vs 横浜マリノス」。
試合前には派手なセレモニーが行われ、サポーターは大歓声。試合は延長の末、横浜マリノスが2-1で勝利し、日本中に「プロサッカー開幕」を強く印象づけました。
3.リーグの方式
Jリーグ初年度は「2ステージ制」で行われました。
- サントリーシリーズ(前期:5月〜7月)
- NICOSシリーズ(後期:7月〜12月)
- 1993年当時は延長戦、決着が付かなければPK戦が行われる方式でした
両ステージの優勝クラブが「チャンピオンシップ」で対戦し、年間王者を決定する方式でした。
4.オリジナル10
Jリーグ開幕に参加した「オリジナル10」は以下のクラブです。
チーム呼称(1993年) | 前身組織 | ホームタウン(当時) | 備考 |
---|---|---|---|
鹿島アントラーズ | 住友金属 | 茨城県鹿島町ほか | JSL2部から参加、ジーコ加入で一躍強豪に |
ジェフユナイテッド市原 | 古河電工+JR東日本 | 千葉県市原市 | 現在のジェフユナイテッド千葉 |
浦和レッドダイヤモンズ | 三菱重工 | 埼玉県浦和市 | 現在の浦和レッズ |
ヴェルディ川崎 | 読売クラブ | 神奈川県川崎市 | 黄金期を築く、現・東京ヴェルディ |
横浜マリノス | 日産自動車 | 神奈川県横浜市 | 1999年にフリューゲルスと統合、現・横浜F・マリノス |
横浜フリューゲルス | 全日空 | 神奈川県横浜市 | 1998年に消滅、マリノスと合併 |
清水エスパルス | 静岡市が母体 | 静岡県清水市 | 唯一「新設チーム」として参加 |
名古屋グランパスエイト | トヨタ自動車 | 愛知県名古屋市 | 現在の名古屋グランパス |
ガンバ大阪 | 松下電器 | 大阪府吹田市 | 初代監督は釜本邦茂 |
サンフレッチェ広島 | マツダSC | 広島県広島市 | 森保、高木、風間、森山佳 後の名監督が在籍 |
👉 2025年現在、この「オリジナル10」で一度もJ2降格を経験していないのは鹿島アントラーズと横浜F・マリノスの2クラブだけです。
5.開幕を彩ったスターたち
初年度は国内外のスター選手が集結し、Jリーグブームを加速させました。
- 三浦知良(カズ/ヴェルディ川崎) … ブラジルで成功を収め、Jリーグ開幕・W杯出場のため日本に帰国 前期は苦しむも後期で大活躍 初代MVPに輝く
- ラモス瑠偉(ヴェルディ川崎) … ブラジル仕込みの華麗なテクニック JリーグカレーのCMも印象的
- 武田修宏(ヴェルディ川崎) … 女性ファン人気No.1
- ジーコ(鹿島アントラーズ) … サッカーの神様が地方クラブを強豪に導く
- リネカー(名古屋グランパス) … 世界的ストライカーが日本でプレー 1986年W杯得点王
- リトバルスキー(ジェフ市原) … ドイツ代表の技巧派MF 1990年Wカップ優勝メンバー
- モネール(浦和) … アルゼンチン出身の助っ人 モネールダンスで人気
- 森保一(広島) … 現日本代表監督、ボランチで日本代表の主力
- 永島昭浩(ガンバ大阪) … 豪快なゴールで人気を博す
- 北澤豪(ヴェルディ川崎) … 日本代表 運動量豊富なダイナモ 黄金期ヴェルディでアイドル的な人気もあった
- 長谷川健太(清水) … 地元清水で活躍、後に監督としても成功
- シジマール(清水) … ビッグセーブ連発の名GK クモ男の愛称で7試合連続無失点記録
- アルシンド(鹿島) … 「アルシンドになっちゃうよ」で人気爆発 サントリーシリーズ(前期)優勝の立役者
- ラモン・ディアス(横浜M) … 元アルゼンチン代表の実力者 32試合で28得点で得点王に輝く
- 木村和司(横浜M) … FKの名手として知られるレジェンド
6.成績とシーズンの流れ
サントリーシリーズ(前期)
鹿島アントラーズが13勝を挙げて堂々の優勝。ジーコ、アルシンドを中心とした攻撃力が光りました。
サントリーシリーズ(前期:5月15日〜7月14日)
順位 | チーム | 試合 | 勝 | 敗 | 得点 | 失点 | 得失点差 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 鹿島アントラーズ | 18 | 13 | 5 | 41 | 18 | +23 |
2 | ヴェルディ川崎 | 18 | 12 | 6 | 29 | 21 | +8 |
3 | 横浜マリノス | 18 | 11 | 7 | 29 | 24 | +5 |
4 | 清水エスパルス | 18 | 10 | 8 | 28 | 25 | +3 |
5 | ジェフユナイテッド市原 | 18 | 9 | 9 | 26 | 23 | +3 |
6 | サンフレッチェ広島 | 18 | 9 | 9 | 23 | 24 | -1 |
7 | 横浜フリューゲルス | 18 | 8 | 10 | 24 | 21 | +3 |
8 | ガンバ大阪 | 18 | 8 | 10 | 27 | 31 | -4 |
9 | 名古屋グランパスエイト | 18 | 7 | 11 | 21 | 38 | -17 |
10 | 浦和レッドダイヤモンズ | 18 | 3 | 15 | 11 | 34 | -23 |
NICOSシリーズ(後期)
ヴェルディ川崎が圧倒的な強さを見せ、16勝2敗の成績で優勝。カズ、ラモス、ビスマルクのトリオが躍動しました。
順位 | チーム | 試合 | 勝 | 敗 | 得点 | 失点 | 得失点差 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ヴェルディ川崎 | 18 | 16 | 2 | 43 | 10 | +33 |
2 | 清水エスパルス | 18 | 14 | 4 | 26 | 9 | +17 |
3 | 横浜マリノス | 18 | 10 | 8 | 31 | 24 | +7 |
4 | 鹿島アントラーズ | 18 | 10 | 8 | 31 | 25 | +6 |
5 | サンフレッチェ広島 | 18 | 9 | 9 | 31 | 25 | +6 |
6 | ガンバ大阪 | 18 | 8 | 10 | 24 | 34 | -10 |
7 | 横浜フリューゲルス | 18 | 8 | 10 | 20 | 30 | -10 |
8 | 名古屋グランパスエイト | 18 | 5 | 13 | 27 | 28 | -1 |
9 | ジェフユナイテッド市原 | 18 | 5 | 13 | 25 | 44 | -19 |
10 | 浦和レッドダイヤモンズ | 18 | 5 | 13 | 15 | 44 | -29 |
チャンピオンシップ
年間王者を決める「サントリーチャンピオンシップ」では、ヴェルディ川崎と鹿島アントラーズが激突。
- 第1戦:鹿島 0-2 ヴェルディ(得点:三浦知良、ビスマルク)
- 第2戦:ヴェルディ 1-1 鹿島(得点:三浦知良/アルシンド)
合計スコア3-1で、ヴェルディ川崎が初代年間王者に輝きました。
7.個人賞・得点ランキング
- 最優秀選手賞(MVP):三浦知良(ヴェルディ川崎)
- 得点王:ラモン・ディアス(横浜M)28得点
- 新人王:澤登正朗(清水エスパルス)
- 優秀監督賞:松木安太郎(ヴェルディ川崎)
得点ランキングTOP5
- ディアス(横浜M) 28点
- アルシンド(鹿島) 22点
- 三浦知良(V川崎) 20点
- 武田修宏(V川崎) 17点
- パベル(市原) 16点
ベストイレブン
ベストイレブン
ポジション | 選手名 | 所属クラブ |
---|---|---|
GK | 松永成立 | 横浜マリノス |
DF | 大野俊三 | 鹿島アントラーズ |
柱谷哲二 | ヴェルディ川崎 | |
ペレイラ | ||
井原正巳 | 横浜マリノス | |
堀池巧 | 清水エスパルス | |
MF | サントス | 鹿島アントラーズ |
本田泰人 | ||
ラモス瑠偉 | ヴェルディ川崎 | |
FW | 三浦知良 | |
ラモン・ティアス | 横浜マリノス |
8.まとめ
スター選手たちが彩った開幕
当時のJリーグには、世界的に名を馳せたスターが数多く集結しました。
「サッカーの神様」ジーコ、キングカズこと三浦知良、カリスマ的存在のラモス瑠偉、そして横浜マリノスを牽引したラモン・ディアス。
彼らがピッチに立つ姿は、それまで“アマチュアの域を出なかった”日本サッカーに一気にプロフェッショナルの輝きを与えました。
当時はまだヨーロッパの放送権ビジネスや中東のオイルマネーが現在ほど巨大ではなく、むしろ日本にこそスター選手が集まる時代でした。世界的な名選手たちが日本でプレーしたことは、Jリーグ全体のレベルを一気に押し上げることにつながりました。
文化としてのJリーグ
Jリーグは単なるスポーツリーグにとどまらず、新しい文化をも生み出しました。
試合前のチャントやチアホーンの音、独特のアンセム(入場曲)、そして子どもたちが夢中になった「Jリーグカード」。
スタジアムには家族連れや女性ファンも詰めかけ、サッカーは一部の愛好家だけでなく、国民的な娯楽へと変貌していったのです。
日本スポーツ界への影響
Jリーグの誕生は、日本のスポーツ界全体にも大きな影響を与えました。
それまでは「プロスポーツ=野球」という図式が当然でしたが、サッカー選手がプロとして活躍できる道が開かれたことで、子どもたちの憧れや進路の選択肢が広がりました。
結果として、日本代表はのちにW杯出場を果たし、海外でプレーする選手も次々と誕生しました。1993年のJリーグ開幕は、日本サッカーが世界と肩を並べるための第一歩だったといえるでしょう。
個人的に
Jリーグ開幕時、40歳のジーコが開幕戦のグランパス戦でハットトリックし凄いと思った記憶があります Jリーグはゴールデンライムで放送されオールスターゲームも印象に残っています Jリーグカードも集めていました
またこの時は 巨人=読売クラブ=ヴェルディ川崎というスター選手ばかりで強いイメージがあり、ヴェルディがあまり好きではありませんでした ただ今思うと現在もサッカー界を引っ張っている三浦知良選手がMVPで本当に良かったと思います ブラジルで実績を残してJリーグ・日本サッカーの為に帰ってきてくれた選手がJリーグ開幕を全盛期に迎えたことは改めてすごいストーリーであると思います
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